彼の願い事はいつも叶わない。
最後の一打席にかけるつもりが最後まで二打席を要し、
邪飛の予定がピッチャーゴロ。
甲子園には名門熊工の4番センターとして出場。
その栄光の裏でタイムリーヒットを打っても納得いかずベンチ裏で泣きじゃくり。
ドラフトでは恋い焦がれたダイエーホークスからの指名が無く一時間近くも泣いた。
巨人川合のセンターへの当たりを突っ込んで後逸し、ランニングホームランにし、
エース北別府の勝ちを消してしまった後、自身のホームランで逆転勝ちをしても
泣きじゃくってヒーローインタビューを拒否した。
アキレス腱のケガから復帰して放ったホームランを前監督の達川さんに褒められて
涙で謝罪。
2000本安打の時も、阪神戦で敵軍の恩師水谷コーチに挨拶する時も。
前田智徳は本当は泣き虫で繊細な男だったのだ。
しかし、2000本安打を打った相手投手、久本投手の投げる後ろを
自信が2000本目の安打を放ったライトを守り、しかもその時ライトを
守っていた森野選手がライトにヒットを放った。
不思議で因縁めいた最後の試合は前田らしいエピローグだったようだ。
多分、プロ野球選手、前田智徳が泣いた日は10月3日が最後になると思う。
まあ、カープが日本シリーズに出て優勝でもすれば話は別だが…。